NHK「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」の日本文学についてです。
1日たったの5分間。 辞書なしで「読めた」「聞けた」を毎日体感!する語学講座です。
7月は有島武郎の『一房の葡萄』でした。
こちらは6月の『注文の多い料理店』について書いた記事。
2018年度放送分の日本文学をまとめたCDブックに収録されています。
「"Run, Melos!" and Other Stories」
ムック – 2019/9/14
ずぼら母さん (id:education2017) に教えていただき、お気に入りとなった「少年少女日本文学館シリーズ」 にも有島武郎がありました。
少年の心情を鮮やかに切り取った、志賀直哉の「小僧の神様」。ほかに、武者小路実篤の「小学生と狐」、有島武郎の「一房の葡萄」など全13編を収録。読みやすい総ルビ、豊富な用語解説付き。
収録作品
〈志賀直哉〉
小僧の神様
網走まで
母の死と新しい母
正義派
精兵衛と瓢箪
城の崎にて
雪の遠足
焚火
赤西蠣太
〈武者小路実篤〉
小学生と狐
ある彫刻家
〈有島武郎〉
一房の葡萄
小さき者へ
私、恥ずかしながら未読の作品ばかりです。
「一房の葡萄」はもちろん、「小僧の神様」と「ある彫刻家」も気になって、せっかくの機会なので読んでみることにしました。
思えば、有島武郎は『或る女』を一度読んだきりです。
『或る女』は終盤、目が離せずに一気に読んでどっと疲れた記憶があります。若かりし日の私は主人公の凄まじさにただただ圧倒されたのでした。あまりに疲れたので、今後読み返そうと思う事はないな、と思った読後感を覚えています。
そして今回『一房の葡萄』を読んで、
若くて美しい先生の存在感がなんとも言えず『或る女』を彷彿とさせるのですよね。
タイプは違うものの、文章から漂う魅惑的な女性像が重なるのでしょうか。
「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」版『一房の葡萄』
英題は『A Bunch of Grapes』です。
「房」は "Bunch" っていうのですね。
話の舞台は横浜の山の手です。
主人公が通う学校は外国人も多く、どことなくハイカラな雰囲気が漂っているように感じます。登場人物も「ジム」なので英語で読んでも違和感なく読めました。
『一房の葡萄』の先生は、私の中で洋服 (白いブラウスにスカート) のイメージなのですが、イラストでは着物っぽいのも違った雰囲気が感じられて良かったです。
童話ということもあって、英語でも読みやすい話でした。
この話が発端ではないのですが、ちょうど『A Bunch of Grapes』を読んでいる時に、子供達と「make」の使い方が課題になりました。
というのも、子供達が「〜させる」という英文を作れなかったのです。
そこで、「彼が彼女を泣かせる」という文を書かせてみました。
「彼が泣く」は、He cries.
では「彼が泣かせる」は?
えー、「He does cry her.」かなぁ( ̄∇ ̄)
という次男。
突っ込みどころ満載の文ですが、常にとりあえず答えを言ってみる次男のトライ&エラーの姿勢は褒めています。間違いを繰り返しながら覚えていくタイプなのですね。
次男の場合、答える前にもう少し考えてみようか、というのが課題ですね。
あと、なぜか間違った方で覚えていることがあるのです Σ( ̄□ ̄lll)
そこも気を付けなければいけません…。
違うの? He gets かなぁ? He has made her cry. ??
それを聞いていた長男、
「あ!He made her cry. だ! ( ̄ー ̄)ニヤ」
と横取りな感じで答えていました。しかも過去形になってるし…
間違うのを嫌う長男は、常に正解が出るまで考え続けるタイプ。
次男があれこれ考えを出している横で、それを聞いて正解をさらう…。なんかズルいなぁ
( ̄◇ ̄;)
と、それぐらい英訳とか和訳は苦手な子供達です。
『A Bunch of Grapes』の中にも "make" を使う文は出てきます。
この 「させる」の訳がきっかけになり、"make" を使った文を気をつけて読もうということになりました。
I couldn't make myself look.
She made me sit on a sofa.
It made me feel so bad.
など、"make" に注目して出てきた文。
日本語の「〜させる」と結びついたかな。
長男は三単元のSとかも怪しいです ( ̄▽ ̄;)
学校で習ってその辺は覚えていくのかなぁ。
『一房の葡萄』と『少年の日の思い出』って似てると思う
そして、この作品を読んで真っ先に思い浮かんだのが、ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』です。
これ、私が中学生の時に国語の教科書に載っていたのですけど、読んだ当時から何とも言えない後味が忘れられない作品でした。
一度思い出したらどうにもならず、
「ねぇ、『少年の日の思い出』って中学の時の教科書に載っていたじゃない?」
と夫に聞いてみました。
すると、
「え?知らない。読んでない」
のですって!
全国全ての教科書に載っていたわけではないのですね。驚きました。
どこが似ているのか、『一房の葡萄』と『少年の日の思い出』のあらすじはこんな感じです。
『一房の葡萄』
小さい頃絵を描くことが好きだった主人公の僕は、自身の住む横浜の山の手の美しい海岸通りを絵に描いて再現しようとする。しかし、自身の所持している絵具では、本当の景色で見るような絵には描けない。ある日西洋人の同級生・ジムの持つ舶来の上等な絵具が羨ましくて衝動的に盗んでしまうが、程なくしてそのことが露呈し、美しい憧れの先生に言いつけられてしまい…。
『少年の日の思い出』
私を訪ねてきた客の視点で回想される物語。蝶 (蛾) の収集に夢中だった少年時代の僕は、非の打ちどころがない模範少年のエーミールに珍しい蝶を自慢する。しかしそれを酷評されて傷付き二度と獲物を見せることはなかった。しかし、エーミールが自分が欲しくてやまない貴重なヤママユガの羽化に成功したと聞いて、一目見たいと彼の部屋に忍び込む。そしてどうしてもその蝶が欲しくなって…。
どちらの作品も、主人公の「僕」が欲しい衝動にかられて過ちを犯すのです。
その行動の共通点が、この2つの作品を比べてしまう要因なのでしょう。
そこで、この気持ちを何とか共有したいのと、もう一度読み返したい気持ちもあって図書館で借りてきましたよ。
「ヘッセ全集 2 車輪の下」
教科書に載っていた『少年の日の思い出』は高橋健二氏による翻訳版ですが、今は廃盤になっているようです。現在は岡田朝雄氏の新訳版が刊行されています。
やはり高橋健二訳のお馴染みのセリフが読みたかったので、図書館で探しました!
「これこれ、このセリフよ!」と嬉々として読んでいる私の隣で、いたって冷めている夫と長男。
とりあえず読んでもらいました。
うーん、難しい…。なんか苦しい
という長男。
そうだよね、胸がギューとなる感じがするよね ( ̄ー ̄;)
「へー、他のも読もうかなぁ。『車輪の下』読んでみるかな」
という夫。
あー、そういえば『車輪の下』。これも私の中で読み返す気になれない話なのです
( ̄◇ ̄;)これまた主人公がいたたまれない…。
大人になって親という立場で読んだらまた違うのかもしれないな、とちょっと思いました。でも読まないだろうな…。
読後感が良い『一房の葡萄』とは違って、『少年の日の思い出』 は今読んでも痛々しいですね。
長男は
「『一房の葡萄』の先生がいたら解決だったね、いや無理か」
とブツブツ考えていましたけど。
毎日の「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」がきっかけで、英語に限らずいろいろ広がって楽しいです。
実は「エンジョイ…」の中で、長男が一番気に入っているのは「日本ぶらり旅」というテーマです。
アキトとベンの芸人コンビが日本各地を旅するシリーズなのですが、今度このテーマについてもご紹介したいと思います。